最近、AIを用いた開発をしていて、ふと「これはマクロ経済のモデルで説明できるのではないか?」という考えが浮かんだ。
マクロ経済については正直エアプなのだが、この直感を壁打ち相手のGeminiにぶつけてみたところ、今の開発現場で起きている葛藤や意思決定の構造が、驚くほどスッキリと言語化できたきがしている。
どちらが正解という話ではなく、我々が今どういう力学の中でコードを書いているのか。その見取り図として、Geminiとの対話から生まれたこのメタファーを書き残しておきたい。
コードは「通貨」、機能は「GDP」
まず、Geminiとすり合わせた定義はこうだ。開発における各要素を経済用語に置き換える。
- コード(行数) = 通貨供給量(マネタリーベース)
- 実装された機能 = GDP(国内総生産)
- 技術的負債 = 国債(国の借金)
- リファクタリング = 国債の利払い・償還
AI(LLM)の登場は、開発者にとって「異次元の金融緩和」を意味する。かつてない低コストで、大量のコード(通貨)を供給できるようになったからだ。
この「通貨」をどう扱うかによって、開発スタイルは大きく2つの経済思想に分類できる。
1. 財政規律派(Fiscal Discipline)
〜健全なバランスシートの維持〜
一つ目は、AIによるコード生成を慎重に制御する「緊縮財政」的なアプローチだ。
- スタンス: AIが生成したコードを無批判に受け入れず、厳格なレビューとテストを課す。
- メカニズム: 「裏付けのない通貨」を市場(リポジトリ)に流通させないことで、コードベースの健全性を保つ。
- メリット: システムの安定性が高く、長期的なメンテナンスコスト(金利負担)が低い。通貨の信認が維持される。
- デメリット: 機能開発のスピードが鈍化する(デフレ傾向)。市場の変化に追従できないリスクがある。
2. 積極財政派(Aggressive Fiscal Policy)
〜国債発行による成長戦略〜
二つ目は、AIのリソースをフル活用し、大規模な「財政出動」を行うアプローチだ。
- スタンス: 技術的負債(国債)が増えることを許容し、機能実装(GDP)の最大化を優先する。
- メカニズム: レバレッジを効かせてコードを大量生成し、プロダクトの成長速度をブーストさせる。
- メリット: 短期間で圧倒的な機能成長を達成できる。市場シェアやユーザー体験を一気に獲得する際に有利。
- デメリット: 技術的負債が積み上がり、将来的にリファクタリング(利払い)で開発リソースが圧迫されるリスク(財政硬直化)。
なぜ今、「積極財政」が選ばれるのか:未来へのレバレッジ
ここからが、Geminiと話していて面白かったポイントだ。
従来のソフトウェア工学では「技術的負債は悪」とされるため、前者の「規律派」が正義とされがちだ。しかし、AI時代においては後者の「積極財政派」も合理的な選択肢となり得る。
その背景には、「将来のAI能力へのレバレッジ」という仮説がある。
仮説:今の技術的負債(借金)の実質コストは、将来のLLMの能力向上によって劇的に目減り(インフレ)する。
実際、SWE Bench Bashonly を見てみると、約半年の間でスコアが20ポイントも上がっている。
| Gemini 2.5 Pro (2025-05-06) | 53.60 |
| Gemini 3 Pro Preview (2025-11-18) | 74.20 |
| Claude 3.7 Sonnet (20250219) | 52.80 |
| Claude 4.5 Sonnet (20250929) | 70.60 |
従来であれば、人間は手作業で返済(リファクタリング)をしなければなかったから、借金は怖かった。
しかし、1年後、2年後の「次世代LLM」が、今のスパゲッティコードを一瞬で最適化してくれるとしたら?
それはつまり、「将来のテクノロジーによる徳政令(あるいは借金の棒引き)」を期待して、現在あえて借金をしながら成長を買っている状態と言える。
「今の負債は、将来もっと賢くなったAIが安く返済してくれるはずだ」
この期待(インフレ期待)があるからこそ、多くのエンジニアや企業は、恐れずに積極財政的な開発に舵を切れるのかもしれない。
エンジニアは「中央銀行総裁」の視点を持つ
このメタファーを通じて見えてくるのは、「規律」か「積極」かという二元論ではなく、局面に応じたポートフォリオ管理の重要性だ。
- 今は立ち上げ期だから、国債を発行してでもGDPを伸ばす(積極財政)
- 今は安定期だから、引き締めて債務を圧縮する(財政規律)
AIを使って開発するということは、単にコードを書くことではなく、こうしたマクロ経済的なバランスをコントロールする「中央銀行総裁」のような役割を担うことなのかもしれない。
自分が今、どちらの政策を採用しているのか。そして、積み上げた国債を誰が(自分が? 未来のAIが?)どうやって返すつもりなのか。
それらを自覚的に選択するための補助線として、この経済メタファーはなかなか有用な気がしている。
感想(手書き)
冒頭でもあるように、私はマクロ経済エアプなので、ドーマー条件とか初めて知ったレベルなのです。プライマリーバランスくらい知っておかないとだめよな~~とか思ったけど。
まあ一旦おいておいて。ww
コードベースのバグや悪い設計を「負債」として扱うこと自体はしばしばされるトピックではあるし
レバレッジとしての LLM を使う開発というのも、もしかするとどこかで見た言説かもしれない。
そして、それについて新規性が云々とかは、まったくこだわっていないと言っておきたい。
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ソフトウェア企業の株価の暴落のようないわゆる Saas の死の昨今において
果たして「AIをバチコリ使え!イケイケ Vibes アゲ↑↑ 開発や!!」は事業継続性や価値を伴うのか?というのを考えていたわけです。
きっとソフトウェアを提供する側としては、財政規律的にやっていくのがいいだと思う。
当然ながらプロトタイピングやPoC、趣味の個人開発であれば、じゃぶじゃぶ生成AIを使って良いし、使うべきだと思う。
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まあそもそもとして、「何でもかんでも無闇にやるな」っていう話だけかもしれないけど。
でも、魔が差すと「AIが全部やってくれちゃうんじゃね?」とか思うわけなんだけど、そうではないよってことだと思う。しらんがw
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普段と変わった内容でしたが、いかがでしたでしょうか
そして、みなさんのイメージしている「生成AIを使う」とはどんなモノでしょうか?
おふざけ Nano Banana Pro イラスト集
